DJのEQの使い方|ロー・ミッド・ハイの役割と低音を入れ替える手順
DJミキサーの各チャンネルに並ぶ「HIGH・MID・LOW」のつまみがEQ(イコライザー)です。音質を好みに整えるためのものと思われがちですが、DJにとっての一番の役割は2曲を重ねたときに、音がぶつからないように帯域を譲り合わせることです。ここでは、各帯域の役割、低音を2本重ねてはいけない理由、つなぎでローを入れ替える具体的な手順、よくある失敗の直し方を順に説明します。
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DJミキサーのEQとは:ロー・ミッド・ハイの役割
多くのDJミキサーやコントローラーは、チャンネルごとに3バンドのEQを持っています。つまみが12時(センター)の位置で「曲そのままの音」、右に回すと持ち上げ、左に回すと削る、というのが一般的な動きです。
| つまみ | 主に含まれる音 | DJでの主な使いどころ |
|---|---|---|
| LOW(ロー) | キック、ベースライン | 2曲の低音がぶつからないよう、どちらか一方だけを鳴らす |
| MID(ミッド) | ボーカル、シンセ、スネアの胴鳴り、上モノの多く | ボーカル同士・メロディ同士の重なりをやわらげる |
| HIGH(ハイ) | ハイハット、シンバル、空気感 | 次の曲を「チラ見せ」する、耳に痛いシャカシャカ感を抑える |
帯域の境目(どの周波数から上をハイと呼ぶか)や、つまみを左いっぱいに回したときに音が完全に消えるか少し残るかは、機種やソフトによって違います。自分の機材がどう動くかは、取扱説明書で確認しておくと安心です。
EQは「足す」より「削る」道具だと考えると失敗が減ります。右に回して持ち上げるのは、音割れの原因にもなりやすい操作です。
ベース(低音)を2本重ねてはいけない理由
つなぎの最中に、2曲ともローをセンターのまま重ねると、次のようなことが起きます。
- 低音の量が単純に増える:キックとベースが倍近く鳴るので、フロアでは低音だけが膨らんで聞こえ、マスターのレベルも上がって音割れしやすくなります。
- キックがわずかにずれると濁る:ビートマッチが完全でないと、キックが「ドドッ」と二重に聞こえます。低音はズレが目立ちやすい帯域です。
- ベースラインの音程がぶつかる:2曲のキーが合っていないと、低音同士がうなるように濁ります。
そのため、低音は基本的に「どちらか1曲分だけ」鳴らすのが定番の考え方です。ハイやミッドは多少重なっても曲が混ざった面白さになりますが、ローは重ねる時間をできるだけ短くするのが基本です。
ローを入れ替えるつなぎ方の手順
もっとも基本的な「ローの入れ替え(ベーススワップ)」の流れです。2曲のテンポと拍がそろっている(ビートマッチできている)ことが前提になります。
- 次の曲のローを左いっぱい(またはかなり下げた位置)にしておく:チャンネルフェーダーを上げる前に準備します。
- 次の曲を、小節の頭に合わせて再生する:イントロのキックが流れている曲と重なるように始めます。
- チャンネルフェーダーを上げる:ローがない状態なので、ハイハットやパーカッションだけが加わった音になります。
- フレーズの区切りでローを入れ替える:8小節や16小節の頭など、曲の展開が変わるタイミングで、流れている曲のローを下げると同時に次の曲のローを上げます。
- 流れている曲を抜く:低音が次の曲に移ったら、前の曲のフェーダーを下げて(またはハイ・ミッドも削ってから)終わらせます。
入れ替えは、一瞬で切り替える方法と、1〜2小節かけてゆっくり交差させる方法があります。最初は一瞬で切り替えるほうが「低音が2本鳴っている時間」がほぼゼロになり、失敗が分かりやすいのでおすすめです。
入れ替えの瞬間は、両手でつまみを1本ずつ持つのが確実です。片方を下げてからもう片方を上げると、間に低音が完全に抜ける「スカスカの瞬間」ができます。演出として使うのでなければ、同時に動かしましょう。
ミッドとハイはどう使うか
ハイ:次の曲を少しずつ見せる
次の曲のハイを少し下げた状態で入れ、ローを入れ替えるタイミングに向けて少しずつ戻すと、フロアに「何か変わってきた」という予告を出せます。逆に、終わっていく曲のハイを先に削ると、主役が交代した感じを出しやすくなります。
ミッド:ボーカルの衝突を避ける
ボーカル入りの曲同士を重ねると、言葉が混ざって聞き取りにくくなります。どちらか一方のミッドを下げると、ボーカルが引っ込み、ぶつかりが目立たなくなります。メロディ同士の濁りは、曲のキーの相性が原因のことも多いので、選曲の段階で避ける方法もあります。
ミッドは曲の「中身」の多くを担う帯域なので、大きく下げると曲が遠くなったように感じます。ローほど大胆には動かさず、少しずつ調整するのが基本です。
EQで音がこもる・痩せる・割れるときの原因
| 症状 | よくある原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| つなぎの途中で低音がボワボワする | 2曲ともローがセンターのまま重なっている | 次の曲のローを下げた状態で入れ、入れ替えは一度に行う |
| つないだ後の曲が痩せて聞こえる | 下げたローやミッドをセンターに戻し忘れている | つなぎ終わったら、新しい曲のEQがすべてセンターか確認する |
| マスターのメーターが赤くなる・音が割れる | EQを右に回して足している/2曲の低音が重なっている | EQは足さずに削る。曲ごとの音量差はゲインで合わせる |
| 曲によって低音の量がばらばら | 曲ごとの音作りの違い | EQで少し補正してよいが、まずゲインとフェーダーで音量をそろえる |
特に多いのが「戻し忘れ」です。1回のつなぎが終わるたびに、新しく流している曲のEQを全部12時に戻すことを習慣にすると、セット全体の音が安定します。
EQとゲイン・フィルター・アイソレーターの違い
| 操作 | 何を変えるか | 使い分け |
|---|---|---|
| ゲイン(TRIM) | チャンネルに入ってくる音量そのもの | 曲ごとの音量差をそろえる。つなぎの演出には使わない |
| チャンネルフェーダー | そのチャンネルをどれだけ出すか | 曲を出す・抜く |
| EQ | 帯域ごとのバランス | 2曲を重ねたときの帯域の譲り合い |
| フィルター | ある周波数より上(または下)をまとめて削る | 1つのつまみで曲をこもらせる・軽くする演出 |
| アイソレーター | EQの一種で、帯域を大きく削れるように作られたもの | ロータリーミキサーなどに多く、帯域を抜き差しする表現に使う |
「EQで音量をそろえる」のはよくある遠回りです。音量はゲインとフェーダー、帯域のバランスはEQ、と役割を分けると、つまみを触る理由がはっきりします。
EQ操作が上達する練習方法
コントローラーのEQを使って練習する場合、DDJ-FLX4でできること|対応ソフト・スマホ接続・必要な機材を購入前に確認では、低音を自動で調整するSmart Faderなど入門機の機能も整理しています。
- 1曲だけでEQを回して聞く:ロー・ミッド・ハイを1本ずつ左いっぱいまで回し、何が消えるかを耳で覚えます。
- フェーダーだけでつなぐ:EQを使わずにつなぎ、低音が重なったときの濁りを一度体験しておきます。
- ローの入れ替えだけでつなぐ:上の手順どおり、ローだけを動かしてつなぎます。
- ローとハイの両方を動かす:次の曲のハイを少しずつ見せてから、ローを入れ替える流れを練習します。
- 録音して聞き返す:その場では気づかない低音の重なりや戻し忘れが分かります。録音を公開する場合はDJミックスをYouTube・SNSに上げるときの著作権|2つの権利で考えるも確認してください。
ローの入れ替えは、拍がそろっていないと成立しません。テンポ合わせに不安があるなら、先にビートマッチのやり方|BPMを耳で合わせる手順と練習法で練習しておきましょう。ミッドの濁りが気になる組み合わせは、ハーモニックミキシングとは?キーを合わせてつなぐ方法とキャメロット表記で紹介しているキーの相性を見直すと改善することがあります。
よくある質問
- EQはつなぎのとき以外も触っていい?
- 触って構いません。ただし曲は作り手が完成させたバランスで鳴っているので、1曲を流しているときはセンターを基本にし、明らかに耳に痛い・低音が多すぎるときに少し削る程度がおすすめです。
- ローを完全に切ってもいい?
- 入れ替えの準備としては一般的な操作です。ただし、左いっぱいにしたときに完全に消えるか少し残るかは機種によります。少し残る機材では、重ねている間にわずかに低音が混ざることを前提にしましょう。
- コントローラーでもEQの使い方は同じ?
- 基本の考え方は同じです。DJソフトの設定で、EQの効き方(つまみを回したときの削れ方)を選べる場合があるので、ソフトのマニュアルで確認しておくと動きの違いに戸惑いません。