ビートマッチのやり方|BPMを耳で合わせる手順と練習法
ビートマッチとは、2つの曲のテンポ(BPM)とキックの位置をそろえて、つなぎ目で拍がぶつからないようにする技術です。SYNCボタンで自動化できる時代でも、耳で合わせられると、ズレたときに自分で直せるようになり、機材が変わっても困りません。ここでは「テンポを合わせる」「頭をそろえる」「ズレを直す」の3段階で手順を説明します。
CONTENTS
ビートマッチとは何をそろえることか
ビートマッチでそろえるものは2つです。
| そろえるもの | ずれているとどう聞こえるか | 使う操作 |
|---|---|---|
| テンポ(BPM) | 最初は合っていても、時間とともにだんだん離れていく | ピッチ(テンポ)フェーダー |
| 位相(拍の位置) | テンポは同じなのに、キックが「ドドッ」と二重に聞こえる | ジョグホイール、プラッターへの軽い手当て |
テンポだけ合っていても位相がずれていれば二重に聞こえ、位相だけ一瞬合わせてもテンポが違えばすぐに離れます。テンポを先に、位相を後に、が基本の順番です。
練習前に準備する曲と機材の設定
- キックが4つ打ちで分かりやすい曲を2曲:ハウスやテクノのイントロのように、キックだけ・キックとハイハットだけの部分が長い曲が練習向きです。
- BPMが近い2曲:最初は差が数BPM以内の組み合わせにします。差が大きいとピッチフェーダーを大きく動かすことになり、曲の印象も変わります。
- BPM表示を隠す(できれば):表示を見て数字を合わせるだけだと、耳が育ちません。慣れるまでは表示を見て、慣れたら隠す、の二段階がおすすめです。
- ヘッドホンのCUE設定:ミキサーのCUEボタンで、これから出す曲(次の曲)だけをヘッドホンで聞ける状態にしておきます。
ビートマッチの手順(3段階)
段階1:次の曲の1拍目を見つけてキューを打つ
- 次の曲をヘッドホンで聞きながら、最初のキックの頭(1拍目)を探します。
- その位置でキューポイントを設定します。CUEボタンを押せば、いつでもこの位置から再生できる状態にします。
段階2:頭をそろえてスタートする
- 流れている曲(マスター側)の小節の頭を数えます。「1・2・3・4」と声に出すくらいでちょうど良いです。
- マスター側の1拍目に合わせて、次の曲を再生します。
- ヘッドホンで次の曲、スピーカー(またはヘッドホンの片耳)でマスター側を聞き、キックが重なっているかを確認します。
段階3:テンポを合わせ、位相を微調整する
- しばらく流して、次の曲が先に行くか遅れるかを聞きます。
- 先に行く(走る)ならピッチフェーダーを少し遅く、遅れる(もたる)なら少し速くします。
- ピッチを動かしたら、ずれてしまった位相をジョグで軽く戻します。
- 8小節、16小節と流しても重なったままなら、テンポが合っています。
走っている・もたっているの聞き分け方
初心者が一番つまずくのは「ずれているのは分かるが、どっちにずれているのか分からない」という点です。コツは、片方の曲のキックを基準に固定して聞くことです。
- マスター側のキックを「正しい拍」と決め、次の曲のキックがその直前に鳴っていれば走っている、直後に鳴っていればもたっていると判断します。
- わからないときは、ジョグでどちらか一方に少しだけ動かしてみます。ズレが大きくなったら逆方向が正解です。
- キックよりもハイハットやスネアのほうが、ズレの方向を聞き取りやすい曲もあります。
「片耳はヘッドホン、片耳はスピーカー」で聞く方法と、「ヘッドホン内で両方を混ぜて聞く」方法があります。最初は後者のほうが聞き比べやすいことが多いです。
ズレたときの直し方:ジョグとピッチフェーダーの使い分け
| 症状 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 一瞬ずれたが、直すとしばらく合っている | 位相のズレ | ジョグの外周を軽く回して進める/遅らせる |
| 直しても、同じ方向にまたずれていく | テンポのズレ | ピッチフェーダーを少しだけ動かし、そのあと位相を直す |
| 直すたびに逆方向へずれる | ピッチの直しすぎ | ピッチフェーダーを動かす幅を半分にする |
ジョグで直し続けている状態は、テンポがまだ合っていないサインです。同じ方向へのジョグ操作が2回続いたら、ピッチフェーダーを触りましょう。
SYNCボタンは使ってもいいのか
使って問題ありません。SYNCで浮いた注意力を、選曲やEQ、つなぐタイミングに回せるのは大きな利点です。ただし、SYNCは曲の解析結果(ビートグリッド)にもとづいて合わせるため、グリッドがずれている曲では、SYNCしてもずれることがあります。生演奏のドラムが入った曲や、途中でテンポが揺れる曲では特に起きやすいです。
耳でビートマッチができると、こうしたときにすぐ気づいて手で直せます。「普段はSYNC、ずれたら耳で直す」が、多くの人にとって現実的な使い方です。
ビートマッチが上達する練習メニュー
- 同じ曲を2デッキで合わせる:BPMが同一なので、位相だけに集中できます。最初の1週間はこれだけでも十分です。
- BPMが1〜2違う曲で合わせる:ピッチフェーダーの操作が加わります。
- BPM表示を隠して合わせる:数字ではなく耳で判断する練習です。
- 録音して聞き返す:その場では合っていると思っても、録音で聞くとズレに気づけます。録音を公開する場合の注意点はDJミックスをYouTube・SNSに上げるときの著作権|2つの権利で考えるにまとめています。
テンポが合わせられるようになったら、次はキーの相性で曲を選ぶ段階です。ハーモニックミキシングとは?キーを合わせてつなぐ方法とキャメロット表記で解説しています。
よくある質問
- ピッチフェーダーを動かすと曲の音程も変わる?
- 機材やソフトの設定によります。テンポだけを変えて音程を保つ機能(マスターテンポ、キーロックなどと呼ばれます)を持つ機材が多く、オンにすると音程は保たれます。
- BPMが大きく違う曲同士はどうつなぐ?
- 無理にビートマッチせず、ブレイクで切り替える、エフェクトで区切る、半分/倍のテンポとして合わせる、といった方法があります。
- どれくらい練習すれば耳で合わせられる?
- 個人差が大きいので一概には言えません。まずは同じ曲同士で、合っている・ずれているが判別できるようになることを目標にしましょう。