DJミックスをYouTube・SNSに上げるときの著作権|2つの権利で考える

公開 2026-10-05 / 法令・制度は2026年10月時点の公表情報にもとづく

練習で録ったミックスを公開したい——DJを始めると必ず出てくる疑問です。結論から言うと、DJミックスには「曲を作った人の権利」と「音源を作った人の権利」の2つが重なっていて、動画サイトの包括契約で手当てされるのは主に前者だけです。この2つを分けて考えると、何が問題になりやすいのかが見えてきます。

CONTENTS

  1. DJミックスに関わる2つの権利とは
  2. YouTubeのJASRAC包括許諾でカバーされる範囲
  3. 市販音源・配信音源で別途許諾が必要になる理由
  4. SNS・配信サービスごとの確認方法
  5. クラブやイベントでのプレイとネット公開の違い
  6. 「著作権の申し立て」が届いたときの考え方
  7. 許諾の心配が少ないミックスの作り方
  8. よくある質問

DJミックスに関わる2つの権利とは

1曲の音楽には、少なくとも次の2種類の権利が乗っています。

権利誰の権利かネット公開に関わる条文
著作権作詞者・作曲者(多くは音楽出版社やJASRAC等が管理)公衆送信権(著作権法 第23条)[1]
著作隣接権レコード製作者(レーベル等)・実演家(歌手・演奏者)レコード製作者の送信可能化権(第96条の2)、実演家の送信可能化権(第92条の2)[1]

著作権法は、著作者が「公衆送信(送信可能化を含む)を行う権利を専有する」と定め(第23条)、別にレコード製作者が「そのレコードを送信可能化する権利を専有する」と定めています(第96条の2)[1]。ミックスをアップロードしてだれでも聴ける状態にする行為は、この両方に関わります。

DJミックスは「既存の録音物(音源)をそのまま再生してつなぐ」表現なので、曲の権利だけでなく、音源そのものの権利が常に関わるのが特徴です。ここが、自分で弾いて歌う「歌ってみた」「弾いてみた」と大きく違う点です。

YouTubeのJASRAC包括許諾でカバーされる範囲

JASRACは、YouTubeなど許諾契約を結んでいる動画投稿サービスでは「一定の範囲内」であれば、投稿者がJASRAC管理楽曲を含む動画を個別の手続きなくアップロードできると案内しています[2]。ただし同じページで、利用方法によっては個別手続きが必要になる場合があるとも書かれています[2]。

ここで押さえておきたいのは、この包括契約が扱っているのはJASRACが管理する「作詞作曲」の権利だという点です。JASRAC以外の管理事業者(NexToneなど[4])が管理する曲や、どこにも信託されていない曲は、JASRACの契約の対象外です。曲ごとの管理状況は、JASRACの作品データベース「J-WID」で確認できます[2]。

市販音源・配信音源で別途許諾が必要になる理由

JASRACの同じ案内ページには、市販のCDやダウンロードした音源を利用する場合、著作権とは別に著作隣接権(音源製作者やアーティストの権利)の許諾を得る必要があると明記されています。問い合わせ先は音源製作者(レコード会社等)です[2]。

DJが使う音源は、ほぼすべてこの「市販のCDやダウンロードした音源」に当たります。つまり、

という二段構えになっています。「YouTubeはJASRACと契約しているから大丈夫」という理解は、前半しか見ていないことになります。

DJ用に配信ストアで購入した音源も「買ったから自由に公開できる」わけではありません。購入で得られるのは通常、個人で再生・使用する範囲の利用であり、ネットでの公開は別の話です。各ストアの利用規約も確認しておきましょう。

SNS・配信サービスごとの確認方法

JASRACは、利用許諾契約を結んでいるUGC(ユーザー投稿型)サービスの一覧を公開しています。2026年9月28日更新版の一覧には、YouTube、Instagram、TikTok、TikTok Live、Twitch、ニコニコ動画などが掲載されています[3]。

  1. 投稿先がJASRACの一覧に載っているかを確認する[3]。載っていなければ、サービス運営者に問い合わせるようJASRACは案内しています[2]。
  2. 使う曲の管理団体をJ-WID(JASRAC)や各管理事業者のデータベースで確認する。
  3. 音源の権利者(レーベル)の方針を確認する。プロモーション目的でDJミックスへの使用を認めているレーベルもあれば、そうでないレーベルもあります。

サービス側が独自に音源の権利者と契約し、DJミックス向けの仕組みを用意している場合もあります。その場合でも、条件は各サービスの規約に書かれているので、投稿前に必ず最新の規約を読むようにしてください。

クラブやイベントでのプレイとネット公開の違い

店舗やイベントで音楽を流す場合の手続きは、通常、会場やイベント主催者が行います。一方でネット公開は「送信可能化」という別の利用で、行うのはアップロードする本人です。現場でプレイできた曲だから、録音して公開してもよい、とはならない点に注意してください。

なお、著作権法 第38条は、営利を目的とせず聴衆から料金を受けない上演・演奏などを一定の条件で認めていますが[1]、これは「上演・演奏」の規定で、インターネットへのアップロードを広く認める規定ではありません。

「著作権の申し立て」が届いたときの考え方

YouTubeに投稿した動画にJASRAC管理楽曲が含まれているとシステムが検知した場合、JASRACから「著作権の申し立て」の通知が届くことがあります。JASRACはこれについて、著作権の侵害を主張するものではなく、動画を削除する必要はないと説明しています[2]。

ただしこれはJASRACからの申し立ての話です。音源の権利者(レーベル等)からの申し立ては性質が別で、収益化の停止や視聴制限、削除につながることがあります。通知が来たら、だれからの申し立てかをまず確認しましょう。

許諾の心配が少ないミックスの作り方

よくある質問

短い時間(数十秒)なら許諾はいらない?
時間の長さで一律に許諾が不要になるという規定はありません。短くても、録音物をそのまま使えば音源の権利は関わります。
曲名やアーティスト名をクレジットすれば大丈夫?
クレジットは許諾の代わりにはなりません。表記するのは良い習慣ですが、権利処理とは別のものです。
収益化しなければ問題ない?
送信可能化権は収益の有無を条件にしていません[1]。収益化しないことは、許諾が不要になる理由にはなりません。

ミックスの質そのものを上げたい人は、曲同士のキーの相性を見るハーモニックミキシングとは?キーを合わせてつなぐ方法とキャメロット表記もあわせて読んでみてください。

DJ NOTE は、DJの「はじめ方」と「上達」を一つずつ解説するブログです。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な利用は、各権利者・管理団体・サービス運営者の最新の案内を確認してください。

出典

  1. e-Gov法令検索「著作権法(昭和45年法律第48号)」第23条・第38条・第89条・第92条の2・第96条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048(2026年10月5日閲覧)
  2. JASRAC「YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用」 https://www.jasrac.or.jp/info/network/pickup/movie.html(2026年10月5日閲覧)
  3. JASRAC「利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧」(最終更新:2026年9月28日) https://www.jasrac.or.jp/information/topics/20/ugc.html(2026年10月5日閲覧)
  4. 株式会社NexTone 公式サイト https://www.nex-tone.co.jp/(2026年10月5日閲覧)